保存性の観点からも重宝される発酵食品。年中仕込むことができますが、食材の旬に合わせた発酵食品づくりがおすすめです。今回は秋から冬に旬を迎える大豆・お米を使った「米味噌」、酒粕を使った「粕床」、小豆を使った「発酵あんこ」という3つの発酵食品についてご紹介します。
冬に欠かせない手仕事の代表格ともいえるのが「味噌」仕込み。ここ数年、市販の手づくりキットも出回っており、身近に味噌を仕込んでいる人もいるのでは?
味噌は1〜2月の寒い時期に仕込む“寒仕込み(かんじこみ)”がいいといわれています。これは原料の大豆とお米(米麹の原料)の新物がとれる時期であり、また寒いと発酵・熟成がじっくり進み、深みのある味わいになるとか。さらに、寒いと雑菌が繁殖しづらいという利点もあります。
一見すると大変そうに感じる味噌仕込みも、材料を揃えて試してみると、意外と簡単でびっくりするかもしれませんよ。
材料は大豆、米麹、塩の3つ。仕込む日の前日夜に大豆を水に浸しておき、大豆を煮てから潰します。そこに塩と米麹を混ぜたものを加えてよく混ぜ、保存容器に丸めて詰めたら仕込みの完了です。
ポイントは容器に詰める際に、空気を抜くようにすること。また、すべて詰め終わったら表面にふり塩とラップをすること。味噌づくりは「カビが生えてしまって失敗した」という話をよく聞きますが、味噌は空気に触れるとカビが発生しやすいため、空気に触れないように気をつけましょう。
冷暗所で寝かせて、6か月目くらいから食べることができますが、熟成期間によって味噌の色や味わいが変わります。熟成期間が短いと薄い色味であっさりした味わいに、長いほど味噌の色が濃くなり風味も強くなります。熟成度合いで味変ができるので、自分好みの味わいを見つけてみてくださいね。
日々の食事に欠かせないみそ汁にはもちろん、炒め物やディップ用味噌など、使い方もさまざまな味噌。かつては各家庭で仕込んで、その味を自慢し合っていたため、“手前味噌”という言葉が生まれたそう。同じ材料で同時に仕込んでも、仕込む人や保存の環境によっても味わいが変わるので、仲間と一緒に仕込んで、できあがった後に“味噌お披露目会”をするのも楽しそうですね!
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日本酒の仕込みが行われる季節、12月頃から翌年3月頃にかけて出回る新鮮な「酒粕」を使って仕込みたいのが「粕床(かすどこ)」です。自家製の粕床をつくっておけば、さまざまな食材でオリジナルの粕漬けを楽しむことができます。
つくり方は材料を揃えて混ぜるだけ! 耐熱容器に酒粕を入れて電子レンジで柔らかくしたら、その他の材料(砂糖、みりん、味噌、塩、焼酎)をすべて加え、なめらかになるまで混ぜ合わせたら完成です。冷凍庫で保存すれば約2か月保存でき、長く使えるのもポイント。
魚や肉、野菜などの食材を漬けることができますが、粕床の傷みを防ぐため、漬ける食材の水分を取り除いてから漬けるようにしましょう。なお、異なる食材を使う場合、においが移る可能性があるため、小分けにして使うのがおすすめ。また、生肉を漬けた場合、再利用はしないようご注意ください。
酒粕には、日本酒の発酵中に使われた酵母や米のでんぷん質、たんぱく質が入っています。また、醸造工程で加えた米麹がつくったたんぱく質分解酵素なども残っています。そのために粕床の熟成中には、旨みのもとであるアミノ酸が生成され、漬け込む肉や魚に浸透。たんぱく質分解酵素によって、肉や魚自体が分解されてやわらかくなります。
市販の粕漬けはお酒の風味が強すぎて苦手という方も、自家製の粕漬けであれば、粕床に漬ける時間を調節するだけで、味つけや熟成具合を自由自在に変えられるのでいいですね。
粕床に漬けたお肉やお魚が焼けるときのかぐわしい香りはたまりません! ぜひ新酒のお供に自家製粕漬けにチャレンジしてみては?
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お正月に食べるお餅のレパートリーを広げたい方へおすすめしたい「発酵あんこ」。秋から冬にかけて旬の小豆を使って、年内に発酵あんこを仕込んでおけば、お正月に食べるあんこ餅やおしるこにも簡単にアレンジできます。
なお、発酵あんこは砂糖を使わずに、小豆と米麹でつくります。発酵によるやさしい甘みが特徴で、小豆の量で甘さの調整ができます。
手順は、小豆を渋切り(小豆の苦味やアクを取り除く作業)してから水を加え、コトコトとやわらかくなるまで茹でます。小豆がやわらかくなったらゆで汁と分け、60度になるまで冷ましてから、炊飯器に米麹、ゆで汁、塩と共に入れてよく混ぜます。あとは、約8時間、炊飯器の保温機能を使ってゆっくり発酵させるだけ。
麹菌は蒸米(じょうまい)上で生育するときに、でんぷん分解酵素である「アミラーゼ」をつくり、米麹の中にため込みます。この米麹と小豆を発酵させることで、小豆に含まれるでんぷんがアミラーゼによって分解され糖化。そのため、砂糖を使用せずに甘いあんこができるといいます。
自然な甘みがクセになる発酵あんこは、そのまま食べてもおいしいですし、トーストやパンケーキにバターとともにトッピングしたり、もち米と合わせておはぎにしたり、アレンジの幅が広い点もうれしいですね。
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いかがでしたか? 年末に向けて 「味噌」に「粕床」「発酵あんこ」を仕込んでみてはいかがでしょうか。味噌はすぐには食べられませんが、どんな味に仕上がるか、待つ時間もワクワクするのが発酵食品づくりの楽しいところかもしれません。そして、自分好みの味わいに調整できるのも自家製ならでは。保存もしやすく、未来の自分へのご褒美になるので、ぜひ試してみてくださいね!