発酵のきほん

発酵にまつわる基本的な情報。
発酵食品の分類と微生物について解説。

ゆたかな食文化を支える
さまざまな発酵・発酵食品

発酵とは、微生物(乳酸菌、麹菌、酵母など)のはたらきによって食物が変化し、人間にとって有益に作用すること。反対に、有害な場合は腐敗となります。発酵は食物のおいしさや栄養価、保存性を高めるだけでなく、腸内環境の改善や抗酸化作用など、健康効果をもたらします。

発酵のなかまたち

私たちが普段口にしている発酵食品は、食べもの、飲みもの、調味料に分類されます。また、古くから日本でつくられてきた発酵食品もあれば、海外由来のものもあります。

参考:『すべてがわかる!「発酵食品」事典』(小泉武夫・金内 誠・舘野真知子監修、2013)
『図解でよくわかる発酵のきほん』(舘博監修、2015)/カルピスに受け継がれる、遊牧民族の発酵健康ドリンクの系譜(小倉ヒラクさんのブログ https://hirakuogura.com/ より、2017)

微生物のなかまたち

発酵を促す微生物は大きく「カビ」「酵母」「細菌」の3つに分けられます。カビの胞子や酵母、細菌の細胞は、いずれも10μm(マイクロメートル)以下と小さく、目には見えませんが、彼らのはたらきなくしては、発酵食品は生まれません。ここでは私たちの身近な発酵を促す微生物である、麹菌・酵母・乳酸菌・酢酸菌・納豆菌について紹介していきます。

  • カビについて

    カビは、さまざまな形態や機能を持つ糸状細胞の微生物。胞子を飛ばして拡散し、菌糸と呼ばれる糸状の細胞を伸ばして広がります。
    味噌や醤油などの発酵調味料づくりに欠かせない「麹菌」も実はカビの一種。ほかにブルーチーズで知られる「青カビ」、かつお節をつくる際に使われる「カツオブシカビ」などがあります。

  • 酵母について

    酵母は球形や楕円形をした単細胞の微生物。出芽によって増殖します。
    酵母はアルコールをつくるときに欠かせない菌で、お酒の種類によって「ビール酵母」「ワイン酵母」「清酒酵母」などがあります。また、パンが膨らむのも酵母(イースト)のはたらきによるものです。

  • 細菌について

    細菌は単細胞の微生物で、カビ菌、酵母と比べて最も小さな微生物。細胞分裂を繰り返して増えていきます。
    発酵食品をつくる細菌の代表例が、カルピス®やヨーグルトなどに用いられる「乳酸菌」、お酢づくりに欠かせない「酢酸菌」、納豆を生み出す「納豆菌」です。

発酵のぎもん

発酵や発酵食品にまつわる基本的な疑問。そもそも発酵食品の何がいいのか、発酵と腐敗、熟成の違い、麹と糀の違いについてなど、発酵学の第一人者である小泉武夫先生に教えてもらいました。

監修:小泉武夫(こいずみたけお)
1943年福島県の酒造家に生まれる。農学博士。東京農業大学名誉教授のほか、全国の大学で客員教授を務める。専攻は醸造学・発酵学・食文化論。食にまつわる著書は140冊以上。国や各地の自治体など、行政機関での食に関するアドバイザーを多数兼任。発酵文化の推進ならびにその技術の普及を通じてさまざまな発展に寄与することを目的とした「発酵文化推進機構」の理事長も務める。 発酵文化推進機構公式サイト