豊かな利根川の水に恵まれ、良質なお米や大豆を多く育てる千葉県・神崎町(こうざきまち)。昔から日本酒、味噌、醤油などの発酵食品を数多くつくってきた歴史ある“発酵のまち”です。
そうした強みを生かしてつくられたのが、発酵をテーマにした全国初の道の駅〈発酵の里こうざき〉。ここには、全国各地のユニークな発酵食品を取り揃えたマーケット、発酵グルメを味わえるレストラン、カフェ、そして地元の新鮮食材などを扱う直売所の4つの施設があります。
圏央道・神崎ICのそばにある〈発酵の里こうざき〉。
オリジナル商品も多く揃う〈発酵市場〉の店内。
〈発酵市場〉は、地元である神崎町産や千葉県産をはじめ、全国から厳選して集めた発酵食品を常時700点以上扱っているマーケット。必見は、道の駅が中心となって開発したオリジナル納豆〈こうざき納豆〉です。独自に仕入れた中粒の大豆を使用し、粘りや香りの強い、納豆らしい旨みを追求したのだそう。
粘りや味にこだわったオリジナル納豆〈こうざき納豆〉。
一方、売れ筋で不動の1位に輝くのは〈糀ばあむ〉。神崎町で愛されている地元酒造〈平甚(ひらじん)酒店〉の甘酒を生地に練りこんだバームクーヘンで、しっとりした口当たりが魅力。毎月5000個から1万個が飛ぶように売れるというから驚きです。
〈発酵市場〉の人気No.1〈糀ばあむ〉。
平甚酒店の甘酒といえば、さつまいもと合わせたクリーミーな〈さつまいもと甘酒のヴィシソワーズ〉も市場のオススメ。自然な甘みを最大限生かそうと、シンプルで素朴なつくり方を徹底したといい、半解凍でいただくとまるで贅沢なアイスクリームのようです。
スイーツとして楽しむ人も多い〈さつまいもと甘酒のヴィシソワーズ〉。
発酵食品に欠かせない「麹菌」の学術名である「アスペルギルス・オリゼ」を由来とする店名の〈レストラン オリゼ〉では、おいしくてボリューミーな発酵グルメが目白押し。定番の発酵定食から「塩麹餃子ラーメン」「発酵キーマカレー」など20種類近い発酵メニューが並び、丁寧に書かれた料理や調理法の紹介文を読みながら、どれを食べるか迷うのも楽しい時間です。
天井が高く開放感のある〈レストラン オリゼ〉の店内。
なかでも、人気があるのは発酵によって素材の旨みを最大限に引き出した「豚肉の味噌麹焼き定食」や「サバの塩麹発酵セット」。どちらもボリューム満点で、体が喜ぶ栄養をめいっぱいチャージできそうです。
神崎産の味噌と醤油麹をブレンドした特製ソースが好評の「豚肉の味噌麹焼き定食」。
塩麴によってふわふわになったサバの身に驚かされる「サバの塩麹発酵セット」。
〈はっこう茶房️〉の明るいイートインスペース。
〈はっこう茶房️〉は、同じく発酵をテーマに、焼きたてのパンや「みそ豚まん」「甘酒糀あんまん」などの軽食、スイーツがいただけるベーカリー&カフェ。注目は、千葉県松戸市のジェラート専門店〈Gelateria Sumi-ya(ジェラテリア スミヤ)〉とコラボして開発した“発酵ジェラート”。「酒粕オレンジピール」「甘酒みるく」「味噌クリームチーズ」の3種類から選べます。
「酒粕オレンジピール」のジェラート。酒粕の吟醸香とピールの酸味がマッチした大人の味わい。
そのほか、地元・神崎町や近隣の農家でとれたばかりの食材を揃えた〈新鮮市場〉もあり、道の駅らしい楽しみを存分に満喫できます。
もともと、この〈発酵の里こうざき〉がオープンしたのは2015年4月のこと。
「神崎町は千葉県で人口が最も少ない町で、とれる作物の量も人口に比例して、どうしても少なくなります。道の駅といえばその土地の作物を扱うのが一般的ですが、神崎町だけではやや寂しくなりそうでした」
こう語るのは、〈発酵の里こうざき〉の立ち上げから関わってきた事業統括部長・東川慶さんです。
「道の駅に来てくれた人に喜んでもらうにはどうすればいいかを考えたところ、私たちのまちの強みである“発酵”というテーマで、全国の発酵食品を集めるセレクトショップにしてはどうかというアイデアが生まれたんです」(東川さん)
この発想が当たり、コロナ禍をものともせずに業績は年々右肩上がりへ。2023年度は道の駅全体で80万人を超える来場者を記録しました。
「発酵の良さがしっかりと伝わる商品を扱いたいから、どんな原材料を使い、どんなつくり方をしているのかひとつひとつ入念に選んでいます」(東川さん)
セレクトするにあたり、発酵の知識をより深めようと「発酵プロフェッショナル」という資格も取得。気になる発酵食があれば、各地を訪ね歩くこともあるといいます。
今、オリジナル商品の開発にも力を入れているという東川さん。特にこだわったというのが〈鍋店 神崎酒造蔵〉との共同開発による〈こうざき納豆〉です。
「現代の納豆は、どんな人も食べやすいように、小粒で匂いや粘りも控えめにしたものが主流ですよね。でも、こうざき納豆はゴロゴロとした中粒で、あえて匂いも粘りもしっかりと出し、噛めば噛むほど大豆の味わいがしっかりと感じられるようにつくりました。時代に逆行しているかもしれませんが、食べ応えがあって、みんなの記憶に残り、誰かに思わず話したくなるような、発酵のおもしろさが伝わる食品を届けたいと思ったのです」(東川さん)
こうした思いから、道の駅では醤油やチーズ、キムチなどを手づくりするワークショップも定期的に開催中です。
「発酵食品はこんなにおいしい! ということをもっと多くの人に知ってもらい、ご自身が食べたいと思う発酵食品を自ら上手に選んでいただけるのが理想。そのためにも、売り手側である私たちも説明を尽くしたい。皆さんにとって価値ある発酵情報を、これからも積極的に発信していきます」(東川さん)
“発酵のまち”が誇る味はもちろん、各地の名品も集めた、発酵への愛がみなぎる道の駅。訪れれば、きっと新たな発見とおいしさに出合えるはず。千葉にお出かけの際は、ぜひ立ち寄ってみてください。
address:千葉県香取郡神崎町松崎855
access:JR下総神崎駅から車で約7分
営業時間:新鮮市場 9:00〜18:00、発酵市場 9:00〜18:00、
レストラン オリゼ 平日10:00〜16:00、土日・祝日10:00〜18:00、
はっこう茶房 9:00〜17:00
定休日:新鮮市場 無休、発酵市場 無休、
レストラン オリゼ 木曜、はっこう茶房 水曜
TEL:0478-70-1711
Web:http://www.hakkounosato.com/