自然酒づくりから生まれる発酵の恵みと、
旬の野菜をおいしく楽しむ店
〈発酵暮らし研究所&カフェうふふ〉@千葉・神崎町

posted:2021.4.23

〈発酵暮らし研究所&カフェうふふ〉って
どんなお店?

〈発酵暮らし研究所&カフェうふふ〉は、千葉県神崎町(こうざきまち)にあるカフェ。営業するのは平日を中心に週2日ほど。衣食住の発酵をテーマに、各種ワークショップを開催するなど、発酵文化を次世代につないでいく場を目指して、2017年にオープンしました。

お店へのアクセスは、JR成田線下総神崎駅より徒歩約20分、圏央道・神崎ICから車で約3分。自然酒づくりで有名な〈寺田本家〉のすぐ近くにあり、神社の麓というのどかな環境にあります。もともと寮だったアパートをリノベーションした空間で、店内には酒蔵で使われていた木桶のフタや道具を利用した家具や内装を見つけることができます。

こだわりのイッピン

メニューは地元で採れた季節の野菜を酒粕や麹、甘酒など日本古来の発酵調味料で味つけた発酵食。さらに、お肉や魚、卵、乳製品を使わない菜食料理です。

おすすめはその日のお惣菜がプレートに並ぶ「今日のうふふごはん」。見た目にも鮮やかで食欲が刺激されます。内容は、米ぬかふりかけのかかった雑穀ごはんとスープに、8品のお惣菜がセットになったもの。味つけは、つながりのある農家さんの素材の味や思いを伝えたいと、できるだけシンプルに。素材ありきで「今日は何をつくろうか」と考え生み出されたメニューです。

お肉や魚を使っていないと聞くと、淡白なイメージを持つかもしれませんが、お肉の代わりに車麩を使った「車麩の甘酒バーベキューソース」や「酒粕と豆乳のクリームグラタン」など、メインとなるおかずもあります。

「今日のうふふごはん」の一例(腹8分目セット)。左上「玄米塩こうじナムル」、右上「豆腐のしょうゆ麹のせ」、プレート内は右上から時計周りに「車麩の甘酒バーベキューソース」「甘酒キムチ」「酒粕ちいずと根菜のジェノベーゼ」「旬菜のぬか漬け」「大根のしょうゆ麹から揚げ」、真ん中「旬菜とおからの玄米塩こうじサラダ」。スープは「かぼちゃの酒粕ポタージュ」。

また、ユニークなのが、その日の体調や気分によって、ボリュームを選ぶことが可能なこと。小皿と小盛ごはんの「腹6分目セット」、中皿と中盛ごはんの「腹8分目セット」、大皿と大盛ごはんの「まんぷくセット」の3つがあり、デザートをつける代わりに食事は控えめに…ということもできるのがうれしいですね。

ほかに「甘酒と野菜のカレーセット」や「酒粕と豆乳のドリアセット」「酒粕酵母パンセット」など、子どもに人気のメニューもあります。

「甘酒と野菜のカレーセット」。

そして、月替わりの絶品デザートも見逃せません! 甘酒や豆乳クリーム、甘酒あんこなどを使用し、ノンシュガーなのにうれしい満足感を得られます。

雑穀のタカキビを麹で発酵させたチョコ風クリームに、甘酒アイスとフルーツがたっぷりのった「甘酒チョコのフルーツパフェ」(左)と、甘酒と豆乳のクリーム、美作晩茶の寒天の上に、甘酒と黒豆きな粉のアイスクリームとさつまいも甘酒の餡がのった「さつまいもの甘酒パフェ」(右)

どんな発酵?

〈発酵暮らし研究所&カフェうふふ〉で調理に使われているのは、〈寺田本家〉の自然酒づくりからできる麹や酒粕。なかでも〈寺田本家〉の酒粕は、100%無農薬米と水だけでつくったお酒の副産物とあって、とても貴重です。そして、ひと口に酒粕といっても、仕込みのある年だけに登場する「大吟醸の酒粕」や、自然酒酒粕を長期熟成した「熟成酒粕」、発芽玄米酒から出る「発芽玄米酒粕」など、異なる種類があり、それぞれの持ち味を料理やお菓子づくりに生かしています。

また、「発芽玄米麹」も珍しいもの。ぬか部分が残っていて、糖化・発酵に白米麹の約2倍かかりますが、その分旨みの強い調味料ができるといいます。

〈寺田本家〉の麹や酒粕はオンラインショップで購入が可能。

お惣菜メニューで評判のぬか漬けには、長期発酵甘酒〈うふふのモト〉が入っているそう。ぬか床に〈うふふのモト〉の乳酸菌が加わり、安定した乳酸発酵を促してくれます。他にも、自家製の味噌や漬け物など、時間をかけて丁寧に仕込んだ発酵の恵みを楽しむことができます。

醸す人

発酵メニューをつくるのは、酒粕料理研究家の寺田聡美さんです。〈寺田本家〉に生まれ育った聡美さんは、もともと食べることが好きで、高校卒業後は東京の雑穀菜食カフェで料理を学びました。

「野菜を楽しく食べるアイデアなどを教えてもらいました。それから食べることの本質が何かを考えるようになったかもしれません。何を食べるかではなくて、楽しく食べるのが一番! という考えに至ったのもこの頃でしたね」(聡美さん)

数年カフェで働いた後、聡美さんは実家へ戻り〈寺田本家〉を手伝うことに。

「飲食店は生産者と消費者の間にいる仕事でしたが、だんだん生産現場に興味が湧いて実家に戻ることにしました。そして酒づくりを手伝ったんですが、残念ながら私では役立たずで居場所がなかったんですよね…」(聡美さん)

ちょうどその頃、蔵で使い道のない発芽玄米の酒粕がどんどんたまっていく様子を目の当たりにした聡美さん。自分にできることを改めて考えた結果、酒粕料理をつくってみることにしたのです。

「実は私、お酒が飲めないんです。それでも〈寺田本家〉のお酒の原料はいいものを使っているのを知っていたので、その副産物を使って、私のようにお酒が苦手な人にも楽しんでもらえるメニューをつくれたらと思いました」(聡美さん)

そうしてつくり出した酒粕料理は評判を呼び、縁あって引き受けた場所でカフェを開くことに。〈寺田本家〉が伝えたいのは、食べものだけに限らないライフスタイルそのもの。カフェの役割はそれを発信する場として、お客さんが気軽に訪れられるようにスタートしたといいます。

レシピ本や料理教室も

〈発酵暮らし研究所&カフェうふふ〉では、聡美さんによる料理教室をはじめ、これまでチーズ職人を招いての「モッツアレラチーズづくり体験」や、「スパイス×発酵講座」など、発酵にまつわるさまざまなワークショップを開催しています。また、カフェで提供されている甘酒や塩麹、酒粕を使ったレシピはサイトで一部公開されているほか、料理本にもなっています。「発酵を毎日の生活に取り入れることで、大人も子どももお腹から笑顔になってほしい」という思いがカタチになったそう。

カフェで提供しているメニューの人気レシピ65品が紹介されている。

地域の旬の食材と微生物の発酵から生み出されるおいしさを味わえる〈発酵暮らし研究所&カフェうふふ〉。営業は不定期なので、営業日をチェックしてから足をお運びくださいね。

※本記事は2021年4月現在の内容です。最新の情報はお店のホームページをご確認ください。

information

〈発酵暮らし研究所&カフェうふふ〉

address:千葉県香取郡神崎町神崎本宿1968-2
営業時間:11:00~15:00
営業日:不定期
https://www.teradahonke.co.jp/ufufu/

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