発酵レア調味料

日本各地にある“レアな”発酵調味料。
「一度は味わってみたい!」
こだわりの逸品をご紹介。

「金山寺味噌」は“醤油の母”だった!?
3種の麹と夏野菜がゴロゴロ入った
〈昔ながらの金山寺〉

posted:2021.1.15

味噌は味噌でも、みそ汁などには使わずに、ご飯のお供やお酒の肴として、そのまま食べる「なめ味噌」。代表的なものに和歌山県の特産品として知られる「金山寺(きんざんじ)味噌」があります。炊きたてのご飯やきゅうりなどにつけて食べるのはもちろん、地元では番茶やほうじ茶で炊いた「茶粥」に添えるのが伝統的な食べ方。今回は金山寺味噌のさまざまなレシピを考案している〈丸新本家〉の〈昔ながらの金山寺〉をご紹介します。

【「金山寺味噌」とは?】

金山寺味噌とは、お米、大豆、裸麦の3種類の穀物に麹菌をつけて麹にし、ウリ、ナス、ショウガ、シソなどの野菜を合わせて発酵・熟成させたもの。その由来は諸説ありますが、一説によると今からおよそ750年前の鎌倉時代、中国へ渡った修行僧が「径山寺(きんざんじ)」というお寺で食べて感動し、製法を学びました。そして、現在の和歌山県湯浅地方、御坊地方などに製法が伝えられたとされています。

一般的な味噌に比べて炭水化物の含有量が多く、栄養満点の金山寺味噌は、夏野菜を加工した冬場の保存食として民衆に広まりました。その後、紀州地域の産業奨励政策によって県内のほか地域でもつくられるようになり、江戸でも紀州名物として販売されていました。

【〈昔ながらの金山寺〉とは?】

今回ご紹介するのは、和歌山県湯浅町にある〈丸新本家〉が、750年続く伝統製法でつくる〈昔ながらの金山寺〉です。現在は醤油のもとである「もろみ」と野菜の塩漬けを混ぜ合わせて完成させる製法が多いなか、〈丸新本家〉では麹と野菜を樽に入れ約2か月かけて発酵・熟成させてつくります。

また、原料の野菜にもこだわります。〈丸新本家〉では江戸時代から金山寺味噌専用に栽培されてきた地元の伝統野菜「湯浅なす」を復活させて使用。皮がうすくしっかりと実がつまった丸型のなすで、金山寺味噌になるととろけます。「おそらく江戸時代と食感は変わらないと思いますよ」と生産者は話します。

パッケージに「おかず味噌」とある通り、〈昔ながらの金山寺〉は食べ応え抜群。見た目から具材のゴロゴロ感が伝わってきます。実際に食べてみると、麹の原料であるお米、大麦、大豆の素材がそのまま残っており、ナスやウリの歯応えやショウガのシャキシャキとした食感を味わえます。まさに食べる味噌!

なお、〈昔ながらの金山寺〉を含め、和歌山県でつくられている「紀州金山寺味噌」は、国のお墨つきを受けた「GIマーク」を取得しています。粒が残った状態であり、全体的に卵色から褐色の茶系色を有するものであることが出荷の条件。そして、10年以上金山寺味噌の生産に従事した人が、出荷前に、香り、味、食感等について官能検査を行っているといいます。

【〈昔ながらの金山寺〉の使い方】

炊きたてのほかほかご飯と相性抜群な〈昔ながらの金山寺〉。和歌山では「おかいさん」と呼ばれる茶粥とともに食べることも多いといいます。具材の存在感があるので、焼き魚に添えたり、炒め物に使ったり、オリーブオイルやマヨネーズと混ぜてドレッシングにもなります。

同じ発酵食品のチーズとの相性もばっちり。ピザのトッピングに使ったり、グラタンの味つけに使ったり、クリームチーズと和えてクラッカーにのせれば簡単におつまみができあがります。

ちなみに簡単に再現できると生産者に教えてもらったのが「炊き込みご飯」。炊飯器にお米を入れて、上に〈昔ながらの金山寺〉を適量のせて炊飯ボタンを押すだけで完成です。

ほかにも、具沢山という金山寺味噌の特徴を活かして、巻きずしやスパゲティの具材に使ったりもできるといいます。

【〈昔ながらの金山寺〉のつくり手】

〈昔ながらの金山寺〉をつくる〈丸新本家〉は、明治14年和歌山県湯浅町で創業しました。以来、金山寺味噌をはじめ醤油、味噌などを製造・販売している老舗の醸造蔵です。モットーは「ええもん使って真面目につくる」というもの。金山寺味噌、味噌、醤油の原料はすべて国産のものを使用し、合成保存料や化学調味料などは使用していません。

〈丸新本家〉のある湯浅町は、実は「醤油発祥の地」といわれている場所。鎌倉時代に伝わったという金山寺味噌をつくる過程で野菜から出る余分な水分が、カビの原因になるとして捨てられていたところ、調味料として使ってみるとおいしく、改良を重ねて醤油ができあがったとか。湯浅の地から醤油が商品として出荷されたことが、今から約400年前の安土・桃山時代の文献に記されているそうです。

かつては1000戸の湯浅町に、約92件もの醤油屋があったとされている

「金山寺味噌は日本の“醤油の母”といえます。醤油の発祥の地、和歌山県湯浅町には発酵に関する伝統と技術、そしてなによりも先人の想いが残っています。それを子どもたちはじめ、より多くの人に伝えていきたいと思っています」

そう話す〈丸新本家〉5代目の新古敏朗(しんこ・としお)さんは、2005年から地元で食育活動を開始。「丸新発酵蔵部〜やってみそ!始めましょうゆ会〜」と題したカルチャー教室で、金山寺味噌づくりも行っています。

もともと夏野菜を使ってつくられていた金山寺味噌。中身の具材は家庭やお店によってさまざま。〈丸新本家〉では、シンプルな金山寺味噌のほかにも、ゆず・わかめ・梅・オリーブ・わさび・にんにくを使った多種多様な金山寺味噌をつくっています。

「金山寺味噌から出る汁も調味料として使ってみてください。野菜などのエキスが凝縮されて、煮魚などの煮物に加えるだけで、びっくりするような味になりますよ!」(新古さん)

醤油の源である金山寺味噌。そのまま味わったあとは、ぜひ調味料として活用してみてください。

information

〈丸新本家〉の
〈昔ながらの金山寺〉

価格: 378円/150g、648円/270g、1,242円/540g(税込)
丸新本家オンラインショップ:
https://www.marushinhonke.com/c/3557/6117